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ジリジリと焼けるような暑さの空気が肌にまとわりつく。
今日は、年に1度の花火大会の日だ。
………といっても、この花火大会に来るのは実に10年ぶり、なのだけど。
私は、10年前までこの街に住んでいた。
澄んだ空気も、柔らかく流れる小川も、心地よい風を送ってくれる森も、何もかもが好きだった。
ずっとずっと、ここにいたかった。
それなのに………
私は、突然この街から出なくてはならなくなった。
どんなに泣いても、喚いても、幼い私には抗う術などあるはずもなく……
私はここを去った。
━━━大好きだった、幼なじみに一言も告げることなく。
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