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丸まった背で、顎下に生えた微かに僅かな無精髭。
精彩さを欠いた淡いブルーの瞳が、じとり……と、己を襲った銀剣の主の背に向けられる。
「あー……、その、なんなんスかね。……試験。どっちかといや試練?」
不満と疑念と困惑が、それぞれ七:一:二の偏った割合でブレンドされた半眼を受けて、口元に浮かんだ強気な笑みと共に、振り返る襲撃者。
途端に射し込まれた、煌びやかな輝き。
「当たってくれないとは……中々やるじゃないか?」
垂れた眦(まなじり)。吊り上がった口元。
フードから覗く、金の眉と同色の眼(まなこ)を掠める黄金色の前髪が、銀白の大刀を肩に担ぐ動作で揺れる様は美しさと共に……凶暴さをも演出する。
それはやたらとぎらつく双眼がゆえか、はたまた口元より窺える野生味溢るる八重歯がせいなのか。
「ゴミ屑」
可憐な唇からもたらされたのは、しかし、声高高飛車な優越者の暴言。
それだけでも、世の男達が嘆きかねないというのに、ソレだけでは止(とど)まらない要素が厳然と聳えーーいや、見下げられる位置にいた。
彼女は、平均的身長より尚低く、届かず、むしろブッチャケ“成人”ですらなかった。
幼子だった。童女だった。有り体に言えば幼女だったのである。
その娘っ子が、身の丈一、五倍を上回る大刀軽々担いで「ゴミ屑」呼ばわりである。嘆くどころか卒倒モノだと言っても過言ではあるまい。
「別にいいんですけどね。傷害ですよね、つか首……はね飛ぶ寸前でしたよね?」
「……だのう。直前だけれど、まあいいじゃないか?」
その言葉に、男はハッとなった。今になって気付いた、一つの揺るがない答え。
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