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私は椅子の上に腰を下ろした。
母がいつも使っていた、窓際に置いてある椅子だ。
外を眺めると子供達が走っていった。
子供達の顔には仮面はない。
幼児は純粋であり、心に偽りがない。
仮面というのは精神が成熟してくる中学生あたりから見えるようになる。
つまり人格が完成してくる時期だ。
大概は中学生ぐらいで仮面ができるのだが例外がある。
虐めを受け、心を閉ざす児童である。
本能的に精神を保護するため仮面を被るのだと思われる。
そんな子のほとんどが悲しみと憎しみの形をした仮面を被っている。
そんな子を見る度、私は心が痛くなり、目を逸らそうとしてしまう。
私が保育園に就職したのは、そんな子に増やさないよう、幼いうちから防げないかと考えた結果だった。
また仲間と保護者しか、仮面を被った人間と会うことがないというのも利点であったからだが。
私は立ち上がり、水を飲みにキッチンへ行った。
食器洗浄機からコップを一つ取り出すと、蛇口を捻り水を出す。
私はコップ半分ほどの水を飲み干した。
壁に掛けてある時計を見ると8時半になるところだった。
コップを置き、私は朝食の準備を始めた。
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