108人が本棚に入れています
本棚に追加
/111ページ
鉄製のドアが開き、前の兵士に続き中へ入る。
ドッン
と衝撃が体を襲う
戦闘工兵小隊
EOD(爆発物処理班)
[工兵小隊作業場]
前日
角田が作業台で爆薬に雷管をねじ込んでいると、対面に座る蜂谷軍曹がこちらに視線を向ける。
「角田はなんでEODになりたいんだ?」
一瞬手を止め答を考える。
(蜂谷軍曹みたいになりたかったからです)
再び作業を始め
「なんか爆弾処理って格好よさそうだと思ったので」
(昨日まで自分がEODにならない理由を聞いていたのに何があったのだろうか?)
視線を上げる事なくそう返した。
「それなら尚更行けよ、お前なら十分に行けると思うぞ」
(まだ蜂谷軍曹の側で仕事がしたいんです)
「なんか、どうせ行くなら良い成績を残したいので」
そこで、視線を向けると
「まだ、大丈夫です」
(本当の事はしばらく言えそうにない)
「EOD教育に参加したくなったらいつでも言えよ」
「了解しました、ありがとうございます」
そして、再び作業を再開した。
体の力が抜け
地面が近づく
戦闘工兵小隊
EOD(爆発物処理班)
[都内某所]
半年前
「あ~暑いな」
目の前に対爆スーツを脱ぎ項垂れる蜂谷3等軍曹の姿があった。
(爆発物の教育なんて受けてないのに、何故ここに居るのだろう?)
「な~角田、お前はEODに興味ないのか?」
蜂谷3等軍曹は手で首もとを扇ぎながら質問をしてくる。
「別に興味ないです」
「そうか~」
残念そうにうつむく姿を横目で見ながら資材をハンビーに積み込む
「夢のある仕事なのにな」
(この世界にそんな仕事ある訳ない)
「なぜです?」
「今日のIEDが爆発したらどうなってた?」
「家が2、3軒吹き飛んだんじゃないですか?」
「誰も住んでいない空き屋だ、それでも誰かの思い出の詰まった場所かもしれない」
気が付けば蜂谷3等軍曹は真面目な顔で話していた。
「銃を撃つことだけが守る手段じゃない、そう思うと夢のある仕事に思えないか?」
「自分には…分かりません!」
(この人はそんな事を考えて仕事をしているんだ)
「イーオーディー」
誰にも聞こえない程の声を出す。
(目指すのも悪くないかもしれない)
そう思うと笑顔になった。
床に倒れ
天井を見る。
(いつか、貴方の様に…)
最初のコメントを投稿しよう!