ugly truth

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鈍色の光が腹部目掛けて一直線に煌めく 「消えろ!!!」 スローモーションのように流れる景色 腹部に突き刺さる短刀をぼんやりと眺める自分がいる 現実だと認識した時には激痛が走っていた 「どう…して…だ…!!!」 「黙れ!!!」 喚き散らし短刀を握り込む青年 更にめり込む刃物の冷たさに悪寒が走る 「ぐぁ…」 「お前なんて、死ねばいい。」 耳元で囁かれた言葉は酷く低く無感情だった 出血から崩れ落ちる身体を叱咤して青年の服の裾を掴む しかし呆気なく蹴られる 「お前なんて死ね、死んでしまえ。」 振り返った瞳は酷く冷たく虚空を映していた 徐々に遠くなる足音 床に這いつくばり流れる赤を霞んだ瞳で追う 意識に靄が掛かる中必死で藻掻く 指先に力を入れるが全く動いてくれない 「くそっ、くそっ…!!」 勢いよく燃え上がった炎に辺りが紅く染まる 「何故だ…!!!」 歯噛み誰もいない大広間を睨み付ける 火の手は簡単に部屋を包み込み地獄絵図を描く 「何故だ、レベッタ!!!」 幾ら叫んだ所で届く訳がない 灼熱の炎が皮膚を嘗める 痛みに顔をしかめ絨毯に爪を立てる 「許さない…」 地の底を這うような声 憎しみと怒りに顔が歪む 「絶対に、許さんぞレベッタぁ!!!」 自らの瞳に写るのもまた炎 それは憎悪と復讐の焔 火傷も刺し傷も関係なく立ち上がる もう動ける状態ではないのに復讐の念に押され起き上がる その時には昔の自分は死んでいたのかも知れない 紅く焼け爛れていく大広間に凛とした声が響く 「まだ生きるんだ、しぶとい人間だね。」 いつの間に現れたのか解らないが藍色の髪の青年が目の前にいた 青年の瞳は紺色でもう一方は血のような深紅をしていた .
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