ugly truth

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「誰だ。」 青年は楽しそうな笑みを浮かべて優雅に名乗る 「罪悪の街を造りし悪魔、 最も淫らで不埒な堕天使、 ベリアルと申します。 以後お見知り置きを。」 「悪魔、だと?」 青年の言葉に眉をひそめる 敬虔なクリスチャンでもない自分に悪魔が何の用があるのだ 「悪魔が私に何の用だ。」 青年は唇を三日月状に歪め恭しく跪く 「貴方様は酷くお怒りのご様子… 身を焼かれ、今にも事切れそうな身体を引き摺り復讐を成さんとしておられる。 それを私も手伝わせて頂きたく参りました。」 丁寧でそして侮蔑を孕む共闘願いに暫し青年を見る 深く底の見えない程に濁った非対称の瞳 艶やかに笑う青年は女のように細く白い腕を差し出す 「貴方はまだ生きる事を望むか、否か。」 歌うように紡がれる甘美なる誘い しかし自分にはその手を取る事しか選択肢はない 望みを叶えるのならば 「生きたい。 そして奴に復讐するのだ、私を殺そうとした報いを味わせてやる…!!」 青年の冷たい手を取る もう戻れない 「貴方の願いを叶えよう…」 艶然とした笑みを湛えて青年は翼を広げる 灰色の堕ちた翼を 「我は命じる、悠久の時を駆けて 我は乞う、闇に身をやつしても 蒼き馬を駈り、禍つ霧を払え その手に振るうは、禁じられた剣 打ち倒す敵は主人の御心のままに 我等に影の加護を…」 静かに歌う青年の翼に包み込まれる 青年の冷たい指先が首筋を撫でる 撫でられた首筋に浮かび上がる模様を眺め青年は嬉しそうに囁く 「契約完了だよ、我が主。」 鮮やかな深紅を見つめたまま意識を失った .
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