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暖かな感触が頬を撫でる
擽ったさに身を捩り薄く瞳を開ける
「起きたか。」
目の前には藍色の髪の青年が
紺色と深紅の瞳を細め艶やかに笑い髪を掻き上げた
「えっ…」
一瞬困惑する
何故生きている
その前にコイツは誰だ
と言うか此処は何処だ
口を開け閉めしていると遠慮がちにノックが響く
「入りますよ…?」
聞き覚えのあるボーイソプラノ
扉から顔を覗かせたのは義兄弟の中で一番下の少年
「リンス…!?」
少年は驚いたように駆け寄ってきた
「キリア義兄様…!!
よかった…目を覚まさないかと…」
泣きそうになりながら抱きついてくる義弟を優しく撫でる
「此処はお前の家か。
しかし何故私は…」
少年は鼻を啜りながら答える
「本当は襲名祝いの前にキリア義兄様に会いに行く予定だったの…
でもレベッタ義兄が行かなくていいって言いだして…
気になって行ったら義兄様の別荘が燃えてて…」
目を擦り少年は涙を堪える
「義兄様を助けようと思ったらこの人が助けてくれてたの…」
薄ら笑いを浮かべ続ける青年を振り返る
「お前が…?」
深紅の瞳を細め青年は楽しそうに呟く
「連れないな、我が主。
折角助けたのに、まさか記憶がないとか言わないで欲しいな。」
首筋に小さな痛みが走る
首に手を当てると青年の笑みが更に深くなる
「それが証だ。」
首筋をなぞる冷たい指先
青年の瞳に射抜かれる
艶やかな唇が弧を描く
「思い出したか?」
「あぁ…」
灰色の翼の堕天使の
悪魔の名を
「ベリアル、だろ。」
「良く出来ました。」
青年は端麗な顔を近付け意地の悪い笑みを作る
「人間にしては賢い方か。
結構アンタには期待してるんだよ?」
青年の指先が唇に触れる
「退屈な私を楽しませてくれ。
復讐と言う名の恐怖劇で。」
吸い寄せられるような深紅が楽しそうにこちらを眺める
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