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青年は一枚の羽を取り出し空に見えぬ字を書き始める
滑らかに動く先からぼんやりとした光が滲み出る
魔法のように浮かび上がった文字にはこう書かれていた"楽園にも我(死)は有り.
また死にも楽園有り.
意味のない死は無く、意味のない生も無し.
廻る白い輪の中に数多の天球在り.
輝く庭に蒼球、仄暗い霧に星霜、そして神の箱庭.
輝ける星々は地に降り人々を導く
完全なる代行者が舞い降りし時、声は途切れる."
「どう言う意味だ?」
首を捻ると青年は楽しそうな顔をして手を一振りする
「天球の真理さ。」
靄が掛かったように消えていく文字を一人反芻する
「輝ける星…?」
青年の笑みが深くなる
「暗示、啓示だ。
意味は人、超越者。」
「箱庭は?」
「手に入りそうで入らない場所、変わる事のない自然。」
「完全なる代行者とは?」
「緋、完全なる緋色。
神の最高傑作。」
「天球とは?」
青年の瞳に喜悦が浮かび楽しそうに口を開く
「鎖と鎖を縛る枠、世界の一部だ、この世界もその内の一つだ。」
指を立て笑みを湛えて話す青年
「…全く意味が解らないな。」
首を振り肩を竦める
「私が知り得る世界等、一つしか有りはしない。」
少し美しい顔を歪めて青年は演技のように言葉を紡ぐ
「しかし…人間とは不思議なものだ。
我々悪魔の存在は認めるのに異界を認めない、冥界も異界なのに?
全く解らないな…」
クスクスと笑い唇に指を当て上目遣いで繋げる
「人間とは複雑奇怪だ…」
楽しそうな青年を放って歩みを進める
後ろから鈴のような笑い声をさせて着いてくる青年
「悪魔も充分複雑奇怪だよ。」
「それは光栄。」
悪魔らしい笑顔を浮かべ恭しく頭を下げる青年
「我が主人よ…」
非対称の瞳が細められ唇が割れる
その笑みを眺め何時しか同じ笑みを浮かべていた
夢を紡ぎ現を微睡む
泡沫に身を任せ手を伸ばす
一時の微睡みを経て行き着く先は
鬼の棲む修羅道
ugly truth
end...
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