ugly truth

2/10

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
「どうしてお前なんかが生きているんだ!!!」 義弟の顔が歪む 「卑しい産まれの分際で…」 鈍色の光が掌に現れる 「消えろ!!!」 腹部に走る激痛 口内に鉄の味が滲む 「どう…して…だ…!!!」 「黙れ!!!」 更にめり込む刃物の冷たさに悪寒が走る 「ぐぁ…」 「お前なんて、死ねばいい。」 出血から崩れ落ちる身体 無理矢理彼の服の裾を掴むが蹴られる 「死ね、死んでしまえ。」 振り返った瞳は酷く冷たく何も見ていなかった 床に這いつくばり流れる赤を霞んだ瞳で追う 指先に力を入れるが身体は動いてくれない 勢いよく燃え上がった炎に辺りが紅く染まる 「何故だ、何故なんだ…!!! レベッタ!!!」 「ぐっ…」 胸が苦しい 息苦しさに瞳を開けると青年が視界に入る 「主よ起きろ、朝だ。」 大の男が人の上にのし掛かっている 息苦しさの原因はこれだった 「重いから退け。」 青年を押し退け半身を起こす ベットの上に転げ此方を見詰める青年 「我が主よ、魘されていたぞ。」 上から退きながら青年は底の見えない澱んだ瞳を向ける 「粗方あの夢だろうがな。」 「…五月蝿い悪魔。」 整端な顔を睨み付けると肩を竦める青年 「余計な詮索をするな。」 寝台から降り同じくらいの高さにある非対称の瞳を睨む 「お前には関係ない。」 語気を強めて言うとわざとらしく謝る青年 「それは失敬… 可愛い顔して魘されてたんでね、心配だったのさ。」 青年の戯言を聞き流し寝間着を着替える 「手伝おうか?」 楽しそうに声を掛けてくる青年に溜め息を吐く 「一人で出来る。 お前は私を馬鹿にしているのか。」 とても楽しそうな顔をして青年は口を開く 「馬鹿にはしてない。 酔狂に馬鹿とは失礼だろう。」 「お前…」 殴ってやろうと思ったが青年に頬を触られる 「包帯は一人で巻けぬだろう、手伝ってやる。」 身体の大半に刻まれた醜い痕 顔にまで張り付いたそれは復讐の証明であり契約の証 それを撫でる青年の表情はとても優しく暗い翳りを滲ませる 火傷の痕を撫でる青年の手に触れる 「…頼む。」 「了解した、我が主。」 青年の瞳に一瞬だけ緋を見た ugly truth .
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加