その日の俺

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 背中と腹に鈍い衝撃が走る。  痛い、とても痛い。意外と軽かったけども、それでも痛い。  俺の上にアイツが降ってくるのは予想外過ぎる。栗色のくせっ毛から女子独特の甘い匂いがしてきた、こういう時、あぁ、コイツも女だったんだな、と実感する。  ……いかん、なんかドキドキしてきた、いやらしい意味はないけど、コイツと触れ合うとなんかドキドキする。どっかの少女漫画みたいな現象が起こる。あんまり読んだことないけど。  忌々しいがこういう時、俺はコイツが好きなんだ、と自覚する。  恥ずかしいし、あまり認めたくない事実。だって俺はコイツが嫌いだから。  でも好きなんだ。別に矛盾はしてない、好きで嫌い、これで一つの感情。  また逃げないように思いの外細いアイツの身体に手を回して力を込めた。  ……離せ? 嫌だ。  なんとなく、無性に離したくなかった。彼女なんてもういないのに、コイツはまだ俺に彼女がいると思い込んでいた、いないと言ったらどんな反応をするのだろう?  また力を込める、腕の中で窮屈そうに身をよじらせる仕草はちょっと照れくさいけど、やっぱり愛おしくて、憎たらしかった。  彼女とは別れた、そう言おうとして口を開く。するとタイミング悪くヤツは突き放すように言った。  コイツはいつだって間が悪い。  私は今のアンタに興味ないの、離せあほんだら。  これは……キツいぜかっこ笑、込めていた力を抜いて、一本の腕で顔を隠す。泣きたい、俺は本当に言葉に弱い。  笑いたきゃ笑えよ、最近の子供は良くも悪くも平和の中で生きているんだ。弱いんだよ、コイツ相手だと特に、なんでかは知らないがね。
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