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そんなこんなでバランスが悪い様々な捨て台詞達を残し、幸せがどうこう歌いながらアイツは普通に階段を登って行った。
その背を背を恨みがましく睨みつけるのは少年Dこと敗者。
取り残された俺、しばらくジッと動かないで天井を見上げていよう、謎の決断をしてぼんやり涙腺が元に戻るのを待つ、廊下特有の冷たさが背中に伝わって寒い。
でも動けずにいる、俺こそいったい何がしたいんだよ、わからん。
寝返りをうって階段に背を向けると背中にとんでもない鈍痛が、痛い。
なにするんだよ……。
見るとまさかの元カノがお友達を連れてこの世の物とは、とてもじゃないが思えない、いや、思いたくない殺気じみた冷ややかな視線を、敗者に浴びせていた。
あ、朝早いんですね。
俺の固い笑顔と、精一杯の強がりを華麗にスルーして、一言、私の善意を無駄にすんなよハゲ、とその辺の男よりも男らしい言葉を吐いて階段を降りていった。
あーいうカッコいい所が俺は好きだ、尊敬してる、憧れる。そして時たま見せる女の子らしいギャップが魅力的な素晴らしい彼女だった。
ありがとう、と叫ぶとうるさいハゲと山びこみたいに返ってくる。
俺の気持ちに俺より早く気づいて、説教して、自分から身を引いて、本当、良い奴、お人好し。
あんな彼女欲しい、フられたばかりですが。
俺の中には、いつもよくわからない感情が俺の中にドクロを巻いて回っている、思春期は思春期で精一杯なんだ。
意外と苦しくて苦い。
大人になればこの苦さにもなれるのだろうか、酒とかコーヒーみたいに。
今の俺が知る術はない。
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