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「チン・・・」
と短い音と共に、城戸一樹を乗せたエレベーターは目的地の五階へと辿り着いていた。
一瞬後にエレベーターのドアが開き、一樹は数件の飲み屋が軒を連ねる通路へとゆっくりと歩きだした。
数件の店の入口を通り過ぎた後に、一樹は目的の店へと辿り着いた。
《Unison ユニゾン》
と言う看板をちらっと見た一樹は、看板の下にある木製の扉を、いつものように慣れた手つきで開いていた。
「カラン・・・・」
とドアベルの音が響いた後
「いらっしゃいませ~」
と若い女の声が一樹を出迎えた。
一樹はいつもの様に声の主へと片手を上げて挨拶し、誰も客が居ないカウンターへと腰を下ろした。
「よお!・・・相変わらず暇そうだな」
と自分の酒の準備を始めた、白いワイシャツにホットパンツ姿の女へと軽口を叩いた。
「そうだね、まぁカモが葱しょって来た事だし、今日もしこたま飲まして貰うねッ」
「いやいや・・・遠慮する所だよ?そこは。
てか、麻美チャン、いつもしこたま飲んでるから休肝日も必要だろ?」
と一樹が笑顔で諭す様に答えるが
「カズ君さぁ・・・私の楽しみ・・・邪魔しないよね?」
とニヤリとした笑顔を浮かべて答えるのは、いつもの麻美であった。
「ハイハイ、邪魔しませんから」
と一樹は苦笑を浮かべつつ、麻美が用意したグラスへと一樹は口を付け、グラスの中の琥珀色の液体を軽く流し込んだ。
「私も貰っていいですかぁ?」
とキラキラした光を浮かべた、わざとらしい上目遣いで、麻美は自分の飲む酒のおねだりを始めた。
「ってかさ、んな事しなくても、君飲むじゃん」
と一樹もわざとらしい笑顔浮かべ麻美に答えていた。
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