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なんとなく存在する、そんな解放感に似た弛緩だった。
学校全体が、そんな雰囲気に包まれていた。まだ解放されたわけではないが、進行的に、解放されている、と思えるような、そんな感覚に近いかもしれない。
思いながら、僕は机に突っ伏し、呆然としながら目をつぶる。ポカポカとした春の陽気は、常に何らかの形で、睡魔の訪れを感じさせられる。それが、偶に授業中起こるから困る。
「この物質、どういう物質だか覚えてるか?」
先生の声が聞こえるが、ほとんど無視をするように、僕は机に突っ伏している。このままでは危ないと分かっていても、睡魔を拘束することは、僕に出来ない。
「その前に、」
先生は言うと、すたすたと歩いてくる。
まずいまずい起きろ起きろ!
体が言うことを聞かない。僕が起きてほしいと思っているのに、起きてくれる気配がない。
覚悟を決めて、そのままじっとしている。
一瞬の風が来る。
思った瞬間に、鈍痛が僕の頭に伝わってくる。
「いたたたた……、」
言いながら、僕は体を起こす。そこに立っている先生は、名簿を持ってにやけている。首から下がっている教員免許書には、『垣下(かきした)』と書かれている。
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