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やっぱりこうなるのか……。
思いながら、どこまでも楽しそうな垣下先生の表情を、一瞥してみる。周りでは、小さな笑い声が聞こえてくる。いつものことだ。
垣下先生は、静かに尋ねてくる。
「春はぽかぽかしてて、眠いか?」
おどけたような、そんな口調。
聞いて、僕は少しばかり口を窄める。「えっと……、まぁ」答えると、黒板の方に視線を向ける。
「ちょうどいいから答えろ、」
命令形。
若干の忸怩たる思いを秘めながら、僕は垣下先生の方に視線を向ける。
「H2SO4、これなーんだ」
それだけ言われても、僕は一瞬困ってしまう。
しかし、その響きには覚えがある。確か、何か強烈な物だったことは確かだ。
「えっと……、硫酸?」
聞いた垣下先生は、「正解」何かを楽しんでいるような雰囲気で呟くと、黒板の方に戻って行く。
安堵の息を漏らしながら、ノートの方に一瞥をくれる。ノートの端に、『H2SO4→硫酸 テスト!』と書かれている。
小さく吐息を吐きつける。
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