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ホームルームの前、どこか開放的な空気と、楽天的な何かが組み合わさって、特別な気持ちを呼ぶ雰囲気が、辺りに醸し出されていた。慌ただしくもあって、それでいて、どこか開放的な何か。
気持ち悪くはなかった。それについて、僕らは何かを言うつもりはないし、何を言うこともできない。その空気が嫌いと言うわけでもないし、僕だって、少しはそう言った気持ちを持っている。
「でもさー、どうせゴールデンウィークの半分は、部活でつぶれるんだろ?」
雅文の声だった。
聞いた僕は、雅文の方に視線を向ける。机の上にあるのは楽譜だ。ユーホニウム、と楽譜の端に書かれている。題名は『ダッタン人の踊り』だ。
部活と言うのは、僕らが所属している吹奏楽部のことだ。見ての通り、雅文はユーホニウムを担当している。
「でも、半分は休めるんだよ。それなりにね」
あくまで前向きに、雅文へ告げた。
聞くと、雅文は「そうともいえるけどさ、」机の上に置いてあるプリントを、僕の方に向ける。
「宿題が絶対に終わんない」
書かれている量は、確かに尋常ではない。数学問題集十五ページと、英語の教科書和訳、その他もろもろ。
「でも、コツコツやれば終わるんじゃないかな?」
あくまで前向きに、
「いや、この量ゴールデンウィークではおかしいから、精々夏休みの宿題で出してほしいぜ」
雅文は言いながら、ロッカーがある方に伸びをする。確かに、見ていて僕も、この宿題の量は多いと感じる。
「いざとなったら、一緒に宿題を済ませようよ、ね?」
言って見せる。
それを聞いた雅文は、「去年みたいにな」どこか楽しそうに呟いた。
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