グノリステ

7/25
前へ
/1440ページ
次へ
ホームルームの前、どこか開放的な空気と、楽天的な何かが組み合わさって、特別な気持ちを呼ぶ雰囲気が、辺りに醸し出されていた。慌ただしくもあって、それでいて、どこか開放的な何か。 気持ち悪くはなかった。それについて、僕らは何かを言うつもりはないし、何を言うこともできない。その空気が嫌いと言うわけでもないし、僕だって、少しはそう言った気持ちを持っている。 「でもさー、どうせゴールデンウィークの半分は、部活でつぶれるんだろ?」 雅文の声だった。 聞いた僕は、雅文の方に視線を向ける。机の上にあるのは楽譜だ。ユーホニウム、と楽譜の端に書かれている。題名は『ダッタン人の踊り』だ。 部活と言うのは、僕らが所属している吹奏楽部のことだ。見ての通り、雅文はユーホニウムを担当している。 「でも、半分は休めるんだよ。それなりにね」 あくまで前向きに、雅文へ告げた。 聞くと、雅文は「そうともいえるけどさ、」机の上に置いてあるプリントを、僕の方に向ける。 「宿題が絶対に終わんない」 書かれている量は、確かに尋常ではない。数学問題集十五ページと、英語の教科書和訳、その他もろもろ。 「でも、コツコツやれば終わるんじゃないかな?」 あくまで前向きに、 「いや、この量ゴールデンウィークではおかしいから、精々夏休みの宿題で出してほしいぜ」 雅文は言いながら、ロッカーがある方に伸びをする。確かに、見ていて僕も、この宿題の量は多いと感じる。 「いざとなったら、一緒に宿題を済ませようよ、ね?」 言って見せる。 それを聞いた雅文は、「去年みたいにな」どこか楽しそうに呟いた。
/1440ページ

最初のコメントを投稿しよう!

97人が本棚に入れています
本棚に追加