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「亀梨、か。」
赤西さんはそう呟くと、こっちを見た。
「いーこと教えてやるよ。
遅咲きの年の桜はな、普通の時よりも綺麗だと思うんだ。」
「へぇ…。」
赤西さんは何を言いだしたんだろう。
きょとんとした俺に構わず赤西さんは続ける。
「だからな、桜が遅咲きの年に入った新入社員は、大器晩成なんだよ。」
「ホントですか!?」
「まぁ、俺の勘だけどさ(笑)」
「えー…。」
一気に落胆した俺を見て、赤西さんがまた笑う。
そして
ちょっと真剣な顔になる。
「でも!!
亀梨は絶対成功するって!!
俺の勘は絶対当たるから。
な?安心しろって。」
ふわっとした優しい微笑み。
―パッチーン。
あ、これが特大のパチン?
やだ。
ホントに好きになっちゃったみたいじゃん…。
「亀梨?大丈夫?
あのー、言いにくいんだけど
会社遅刻するよ?
走んないと間に合わないよ?
…ほら、早く行くぞ!」
「おわぁっ!」
赤西さんに手をとられる。
赤西さんと触れているとこだけが熱い。
(…もう、いーや。)
今は会社の事だけを考えよう。
恋愛なんて二の次。
でも
俺は遅咲きの桜にちょっと感謝していた。
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