プロローグ

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虫の鳴き声さえ静まる深夜、ある屋敷だけ中の光が漏れていた。 屋敷の中でもある一室だけ騒がしく、ある一人の男が、扉の前を行き来している。 「まだか?まだのか!?」 「旦那さま、落ち着き下さいませ。まだ部屋に入ってから幾時もたっておりません」 否、一人ではなく二人居たようだ。 旦那さまと呼ばれた男は大きくがっしりした体格で金髪碧眼の男 もう一人は碧眼で白髪をオールバックにし、燕尾服を纏い手には絹製の白い手袋をしている。 「しかしだな…」 「旦那さま。家内が申しておりましたが、出産は女の戦場、男はどっしりと構えて戦場に立つ伴侶の援護をしなければならない…と」 「ぬぅ…こういうときは腕力や魔力があってもなにもできん…男とは情けないものよ…」 結局、男は同じ場所を歩き回っていた。白髪の男の顔には暖かい笑みが浮かんでいる。 そして、時は進み部屋の中から一際大きな声が響きわたった。 たった一言 「おぎゃー!!」…と
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