『たからもの』

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「叶う日が楽しみですね、隼巳先輩!」 「……ああ。お互い、頑張ろう」 「はいっ!」 「……そうだ。これを」 そう言って差し出された手には、件(くだん)のポエム。 部員達が読んだ後に、再び隼巳の手に戻されていたそれを、砂都子に返そうとする。 「それ、……よかったら、貰ってくれませんか…?」 上目遣いで言われれば、即答するだろうと思われたが…ほんの一瞬、隼巳はギシッと固まった。 逃げようとする心を必死で捕まえ、顔中の筋肉を総動員して、なんとか笑顔っぽい表情を作る。 「………………………あ、ああ。……その、ありがとう。大切に仕舞っておく」 笑顔は保てたが、最後にポロッと本音が零れた。 (……しまった。……これは失礼すぎるな…) 流石に砂都子でも気分を害したのではないか、と、恐る恐る(無表情で)様子を窺う。 「そんな、宝物みたいにされたら恥ずかしーですぅ」 (…………砂都子くんが砂都子くんで良かった) 「いや…。 それより、随分時間が経っていたようだ。活動時間が終わってしまう」 「ほんとだ!そういえば、隼巳先輩本を読もうとしてたんですよね。 邪魔しちゃってごめんなさい。私も、デッサンの本とか探して読みます」 慌てて謝ってから、離れていこうとした砂都子の腕を、隼巳が掴んで止めた。
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