―壱― 花火

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いつものデートの時に、君からの突然の申し出を受けた時は、正直に言えば面倒くさかった 『一緒に浴衣を着て、花火大会に行きたい』 断ろうと思ったんだ だって浴衣着たことないし 着方もわからない それに花火大会なんて わざわざ大嫌いな人混みの中に行かなきゃいけないだろ? あんなの御免だ 少し離れた高台から見れれば充分だろ? 浴衣は君だけ着ればいいよ。 女の子が着れば、それだけで充分、夜道を彩る華になるんだし。 『駄目…?』 …………………… 捨てられた猫みたいな目で 僕を見るから 言えなかったんだ 『いいよ。行こう』 パァッと花が咲いたような笑顔で喜ぶ君に、そっとキスをした
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