新しい春

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お母さんの横を通って階段を上がる 私の部屋は兄貴の隣だった 兄貴は6畳の洋室で私は6畳の和室 私の部屋の方が陽当たりが良かったけど兄貴は洋室にこだわった 持っていたカバンと辞書を手から落として疲れた体をベットに投げる うんざりするほどこの家が嫌だった あと3年 高校を卒業したら就職してこの家を出る それは前々から絶対決めてる事だった 就職先を考えて高校のランクを上げたのは誰にも内緒 それくらい本気でこの家から出ていきたかった 動く気力もなくてぼんやりしてたら兄貴の部屋をお母さんがノックする音が聞こえた 「ご飯よ」 お母さんはついでみたいに私の部屋の襖を叩いた 私はだらだら起き上がって制服からスエットに着替えた おまけだけど虐待とかはされないからまだまし 渋々降りていくと兄貴はまだ来てなかった テーブルの私の位置に1万円札が置いてあって、辞書代って書かれたメモが重ねて置かれていた 黙ってスエットのポケットにしまう お母さんは流しで洗い物をしていて、私が食べ終わって2階に上がるまでずっと背中を向けていた
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