序章<語り部>

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可哀想、というだけで慈愛を受けるのもどうかと思う。 悲哀に満ちているように見えるのは、己が自身の勝手な自己解釈にいたるからではないか。 別に、当の本人も非道い仕打ちであると感じているのであれば、成り立った関係なので俺もあーだこーだとは言わない。 しかし、当の本人がそう落胆していないときがある。 そういう者に優しさを投げ掛けるのは慈愛の無駄遣いではないだろうか。 場合が悪ければ反感を買うかもしれない。 そうなった時、都合はあまりよろしくない。 だから、といって。 余った慈愛をわけてもらえるとなぁ、なんてことは露程にも思っていない。当然の如くだ。 別に羨ましいとかそういうものではない。 ただ、俺を満ち足りた者であるとして、憂いてくれる者が多くないのが虚しいんだ。 念を押すけど、俺はまったく羨ましくなんてない。
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