わたしは幽霊

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都会にある大きな病院。 そこに勤務している若い看護婦二人は、こそこそと廊下で噂話をしていた。 「新しく入ってきた、小学生の女の子。栄養失調だって」 「虐待かしら。怖いわね」 「でも、なんかその子、変なのよね。『わたしは幽霊』って言ってるの」 わたしは幽霊。 だって、ママにはわたしが見えてないの。 ママがわたしを、無視するわけないでしょ? だから、わたしは死んだんだってわかったの。 パパがわたしを庇って、大きな車にひかれた時、きっとわたしも一緒に死んだの。 わたしが泣いたって。 わたしが転んだって。 わたしが怒ったって。 わたしが拗ねたって。 わたしが話しかけたって。 ママはわたしに気付かない。 わたしが幽霊だから、透き通って、ママには見えてないから。 ママ、気付いて。 わたしはここにいるよ。 わたしは幽霊。 今も昔もこれからも。 わたしは幽霊。
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