勇者の本分

序章 星の数ほどの勇者

武勇に優れた戦士や、勝敗にかかわらず勇敢に戦った者、魔物を数えきれないほど倒した兵士、彼らに対して皆は勇者という言葉を用いる。

そもそも、勇者は世界に一人だけのはずである。

なのにどうしてこんなに多くの勇者が生まれたのか。

もちろんのことだが、勇者と呼ばれる存在がいるからには魔王と呼ばれるものも、魔物と呼ばれるものもこの世界には当然のごとく存在している。

昔、魔王がこの世界を支配し始めた時、たった一人の勇者はその野望を打ち砕くために冒険に出た。

人々は勇者を称賛し崇め、何をされてもそれが魔王を倒すためになると信じ、勇者に尽くしていた。