告白

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20時過ぎの電車内は、部活帰りの学生や仕事帰りのサラリーマンが多く乗っていた。 学校名の入ったジャージに身を包んだ男子学生たちは、エナメルバッグを足で挟むようにして床に置き、笑いながら部活動の話をしている。 セーラー服姿の女子高生たちは、互いの携帯電話を見せ合いながら「これやばくなーい?」などと会話をしている。 元気のあり余る学生たちと対照的なのは、仕事帰りのサラリーマンたちだった。 吊革に手を掛け、何度も顔が下がりそうになりながらも、絶対に寝るまいと必死に顔を上げているその姿は、何度パンチを食らっても立ち上がるボクサーのようにも見えなくはない。 座席には、窓に頭をくっつけ、人目もはばからずに口を大きく開けて寝ている若いサラリーマンもいる。 部活帰りでもきゃっきゃと騒いでいる学生たちのような元気は彼らにはなく、文字通り疲労困ぱいしていた。 ドア付近に立っている奈胡はというと、元気があり余っているわけでも、疲労困ぱいしているわけでもなかった。 ただ窓の外を見つめながら、先程まで自分の身に起こっていたことを思い出していた。
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