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「らーんっ♪」
ドカッ!
「うぐっ……!」
オレは後ろから勢いよく飛び付かれ、危うくこけそうになる。
「菜穂……!お前、いきなりとびつくなっ!危ないだろうがっ!」
「ねえねえ藍♪何読んでたのー?」
き、聞いちゃいねえ……!
オレは深く深くため息をつきつつ、持っていた本を菜穂に突き付けた。
「歴史書」
「はあっ!?」
いや、聞いてきたのはお前だよな……?
ショートヘアに大きな瞳。よくおモテになるかわいらしい女の子――こいつは泉菜穂(イズミナホ)。小さい頃からの友達。だけど……
「あんたそんなんだから彼氏できないのよ!男っぽい上にがり勉!!この高校が制服ないからって男物の服ばっかり着るし」
彼氏彼氏うるさいし、本読んでたら怒るし、うるさい……おかん?
「関係ないし!彼氏とか必要ねーし!」
そしてオレは皆月藍(ミナヅキラン)。読書大好き高校2年。……生物学的には、女。
「ったく……それで、どんな本なわけ?」
ま、どんだけけなしても一応話にはのってくれるんだけどな。
「ん?ああ。実は昔は魔法使いが現実にいたらしいって本」
菜穂は本をしげしげとながめ、タイトルを読み上げる。
「『よくわかる!昔の外国~魔法使いは実在した!?~』ねえ。本当に実在したのかしらね。ってかこんな本誰が書いたのよ」
オレは菜穂から本を返してもらう。
「それが作者不詳なんだよなー。それがまた現実味あると思わねえ?この本によると、異世界にいるだけで今もまだ魔法使いは存在するんだってさ。すげーよな」
本を語るときのオレは本当にイキイキしてると思う。
菜穂が興味ないとわかってはいるものの、きっと目を輝かせて話しているんだろう。
「藍って本当に本好きよね。怒る気も失せちゃうわ」
案の定、菜穂は呆れたというようにため息をつく。
「あ、今日あたし委員会で遅くなるの。勇樹はいつものごとく部活だから……先に帰っててくれる?」
「ん、わかった。じゃあまた明日な」
「また明日!」
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