そして偉大なる王が命令を下す

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 「喫茶店の話だけど、場所知ってるし、僕が案内しようか?」  「いや、良いよ。一人で来るように言われてるし。それに、お前は確か部活があっただろ? 俺なんかより、そっちを優先させなよ」  「僕が居なかった処でさして変わる訳でも無いさ。割く時間も十分ぐらいだしね。ま、君が良いと言うなら無理にとは此方も言わないけどね」  「悪いな。折角の気遣いを無碍にする感じでさ」  「一人で来るように言われてるなら仕方ないさ。一人で不良の待ち合わせ場所に行くと言う事はもしかしてカツアゲでもされるのかな?」  「そうならないように祈ってる」  「財布預かろうか?」  「なんだろう、その気遣い凄く馬鹿にされてる気がする」  「僕が君を馬鹿にしなかったことはない」  「誇るなよ!」  その後、場所の具体的な説明をして貰い、それを区切りとして、彼らの昼休みは終わり、再度授業が始まる。此処からは、先生にやたら指摘された事を除いては、平穏なまま予定の時間まで時が進むのだった。  ◆  時間は四時。万が一を備え、十分前行動を念に入れていたのだが、何分相手が相手だ。天城の彼に対しての態度や考え方、その他諸々な感情が反映された結果が余分な三十分前行動となったのだろう。どう考えても、おびえている。  お目当ての喫茶店は街道の内部の入り組んだ細道に沿って存在していた。場所が分かりにくい場所なだけあり、上代に相談したのはある意味正解だった。住所を頼りに探すのは恐らく困難だったろう。
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