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この男、天城総司(あまぎそうじ)は実に平々凡々な学園生活を送ってきた。
寧ろ、その平凡さを自負してもいいと凡人の極みを彼自身は誇ってもいた。友達は数人。クラスの友達とは別に嫌われず、別段好まれ過ぎず、苛めも受けず、恋愛もしておらず、地味といえば地味だが、それほど地味ではない。
明るいと言えば明るいが、それほど明るくもない。成績は中間で、運動能力もズバリ真ん中。顔も別段不細工でもないが、良いところもない。髪型も黒髪であり、少々、本当に少々髪が長いだけで、後は誰からも忌み嫌われない、弄り様のない普通の髪型。服装も、自前である学ランを着崩すこともなく、ズボンも下げ過ぎることもない。
性格も真面目といえば、真面目なのだが、それほど真面目でもない。
〝なんともいえない〟
それが彼の唯一の利点であり、欠点であり、個性だった。
それ以外の利点も、欠点も、得意も、不得意も、成功も、失敗も、何もない。
取り柄がないと言えば、それまでだし、言い方も悪いが、兎にも角にも普通な彼だった。
そう、今日この日、人気のない砂利道を渡る今、この時までは何時も通りの〝彼〟だった。だが、変えられた。異常者との出会いによって。
「よぉ、総司」
周囲に街もなければ、建物もない。外灯だけが唯ひたすら照らすこの一本の砂利道。
見晴らしが良過ぎるこの帰宅路は彼には御馴染の通学路でもあった。
この時間、大雑把にいえば辺りが暗くなる時間だが、この道は街灯の数がやたら少ないため、日が沈むにつれて、周囲が暗くなり、非常に見にくい道になる。故に、この時間のこの道の利用者は少ないという利点から彼の御馴染みである所以なのだ。
だからこそ、此処で人に会うという事態に驚きを隠せずにいた。無い訳では無いのだが、レアケースであるのは間違いない。
それに加え、何やら知り得る人物との接触だった。彼、天城総司は塞いでいた口を漸く開く。
「誰、ですか?」
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