愚者に戦を唱えるは――

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 第一声はその一言だった。  どうやら天城は彼を知らないようだ。だが、彼は逆に天城の事を把握しているようにも思える。  この一方的差は何かと問えば、答えは出ない。何より彼の容姿、赤く染められた真赤な髪を逆立てオールバックにしている。耳にピアスも空けており、来ている学ランもボタンで閉めず、開けっ放しだ。一目見て感じる第一印象は不良であろう。  天城もそれを瞬間的に察しているのか、何処か逃げ腰である。正直、彼は一生縁を結ぶとは思えない人間であった。それでも、向こうは天城の事を知っているのだろう。  矢張り、何処か一方的な関係である気がする。  「誰ってお前、その反応はねぇだろ? 笑えねぇ。友人との再会だぜ?」  どうやら友人のようだ。いよいよ何が何だが理解できなくなってきた。言われてみれば、着ている制服も同じのようだし、少なくとも接点を持っていないというのも変な話なのかもしれない。  と、勝手に自己解釈をする天城。解釈するだけで、理解するだけで、状況を把握したわけではないのだが。  此処で一つ、可能性がひらめく。  「もしかして、カツアゲですか? スイマセンけど俺、金は持ってないんですよ」  「あぁ? 別に金の話はしてねぇだろうが」  「ハイ! そうですねスイマセン!」  間違いだったようだ。彼の全力の睨み、眼力に怯んでしまい、反射的に角度九十度のお辞儀を繰り広げる。  目からレーザーが出る勢いであるガン飛ばし、その次元まで行けばある意味讃えたくもなる。男は目力を維持しながら一方的に会話を続ける。  「『愚かな道化師(クレイジーテラー)』、使えんだろ? 早く戻せ」
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