愚者に戦を唱えるは――

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 「くれいじー……何? え、今なんて言ったんですか?」  いきなり手をさしのばしたかと思えば、訳も分からないスペルワードを口にする。  当然、理解できる訳もなく、唯でさえこのシチュエーションを把握できていない彼にとっては中々過酷な宣告でもあった。  「あ?」  「スイマセン! 知らないです! 本当マジで!」  「一々反応すんじゃねぇ。絡みにきぃな」  「ヘイ!」  「いや、ヘイじゃねぇよ」  「ウス!」  「もう黙れよ」  閑話休題。  ある程度脱線した話を再び戻すためのやり取りを二度三度し、不良男は口を開く。  「そもそも、テメェがやるって言うから、俺はテメェを頼って此処に来たんだ。なのに、なにも出来ねぇってぇのは無しだぜ?」  矢張り、何の話かが理解できない。やる? 戻す? 出来ない? それらの言葉を反復して繰り返すが、やはり心当たりがない。  何やら話が予想より壮大そうだが、幾ら壮大でも、何度も言うが理解出来なく ては意味がない。記憶にない事を問われても、答えは出ないのだから。  いい加減、彼の挙動不審な動きを意味深に理解しだしたのか、首を傾げる。眉間にしわを寄せ、「もしかして」等という曖昧な副詞を利用して、自らの疑問符を解決しようと試みる。  「お前、マジで何もしらねぇのか?」  無い。そう断言するしかない。
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