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一時の雨は空に還ること無くそうそうと降り続けている。
日もまたダルさに起き上がれぬ私のからだのように、早々と落ちていく。
手にした一つの傘と今の私にはお似合いの小さな鞄。
肩に乗った雨雫を拭いながら一人バスを待つ。
時刻は午後七時を少しばかり回ったところ。
次のバスは…………、十時過ぎ。
やはり急に決めたのがいけなかったのか、いや、それは仕方がなかった。
(物語の始まりはいつも急で、それでいてしっかりできている。)
ってこの逃げ出した現実を物語に例えている時点で私はダメなのかもしれない。
ポケットから煙草を取り出す。吸い馴れたマルボロ。
が、案の定しけって全く火がつかない。
一人のバス停。静かな時間が流れる。
鞄の中の予備のタバコをあさる。これはまだいけそうだ。
すっかり闇が支配した世界にオレンジ色の灯りがポッと灯る。
とりあえず落ち着きを取り戻す為の無駄な抵抗を試みる。毒が体に染み込み全身を蝕んでいく。が、世界は確実にあると実感できた。
夕刻からの雨は次第に強さを増す。
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