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家に帰って晩飯を済ませる。
『ご馳走様』
仕事時のスーツ姿のままだったし、着替えよう。
『…今日はふわふわ』
白い膝下までのワンピース、長袖のパーカー。
結んだ髪を下ろして、コテで巻き直す。
薄ピンクのリップをぬって、睫毛をあげて…
『さぁ、散歩行こ((ニコ』
覗いた鏡に微笑みを返す。
うん、完ぺき☆
『あ、ポーチ』
いつものように、中身を揃えて、腰にカチッと装着。
家の鍵を閉めると、ふわふわワンピースを揺らしながら、てくてく歩く。
行き先は無い、ただ歩く。
歌を歌ったり、独り言を呟いたり…
何気ない何かで安心できるなら、それこそ生きていて損は無いって思える。
夜の少し冷たい空気に、私の息も溶けていく。
『…気持ちい』
大通りに出ると人や灯りが増えて、少し眩しい。
横断歩道は青から赤に変わりかける。
急いで走って、向こう岸までいく途中。
少年が走る、車が来ているのに気がつかない。
「危ないッ!!!!」
横断歩道をUターンする。
…助けなきゃ、せめて男の子だけでも!
間に合えッ!!!!
僕は男の子を突き飛ばす。
数秒後、身体が宙に飛んで落下する。
『…ッ!!!!』
身体に激痛がはしって、思考回路が痺れていく。
…あ、僕死ぬんだ。
騒ぐ周りの野次馬の声。
泣き叫ぶ少年が最後、目に写って…
僕は、そのまま意識を手放した。
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