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吸い込まれそうなほどに澄んだ氷色の瞳が揺れる。その目が逸らされた瞬間、悠が入ったはずの路地の入口があっただろう場所に戻されていた。
まるで自宅に帰ってきたかのように、さも当然とさえ言いそうなほど自然に店の中へ滑り込んだ。
「まだ――」
「やあ。久しぶり、紫月」
紫月の顔が、悠ですら見たこともないほど蒼白になった。
「ユエ、何故」
ようやく搾り出した、消え入りそうな声。
「今日は休業だ」
「え、」
「悠、分かってくれ」
その表情はまるで、
「幽霊でも見たような顔じゃないか。まあ、間違っているとも言えないかもしれないが」ユエが言う。
顔見知りよりも親しい関係であることは悠にも分かるのだが、しかしそれでは表情の説明がつかない。普通、知人や友人が来たというならもっと喜びそうなものだろうに、紫月は怯えたような表情をしている。
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