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「時間が違ったから、悠は忘れてしまったのかもしれないね」 ユエが柔らかく微笑んだ。 「どうして……」 「生き返ったのか、なんて野暮な質問はしないでくれ紫月」 少女は微笑んでいるが、未だ目が笑っていない。それに悠は気づいていた、しかし紫月に伝える術がない。 「光が強ければ、それだけ闇も比例するものだ」 何を知っているのか、その目には強い悲しみが宿っているように悠には見えた。 「ユエさん、貴女は何を知っているのです?」 一瞬だけ虚を突かれたような表情を浮かべたが、すぐに嘲笑ともとれる笑いをあげる。 「天秤が傾かなかった。悠、貴方は全て忘れてしまっている。残念だ、とても残念だよ」 「目的は何だ」 「彼を探すこと……しかし、あまりにも午睡が長すぎた。もう逃げているのか追っているのか、それすら分からない」 眠気を誘う、オルゴールの音を思わせる気怠げな声色。かっちりとした服の襟を少しばかり下げ、自ら首筋を露出させる。そこから鎖骨にかけての白い肌に、鮮やかに映える黒い大輪の薔薇の花。その脇には山が7つある星型、星の中には装飾的な『4』の数字。 刺青なのだろうか。それよりも悠は皮膚を食い破りたい衝動に襲われた。ユエが文様を見せた頃から、その辺りに悠にしか分からない甘美な香りが漂って仕方ない。
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