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本当に、ここまできたら呆れちゃうね。なんて強情な騎士様だ。そこまで強情だと、履歴書に書けるくらいだよ。
「君がこのままだと、城は壊れちゃうのに、仲間が死んでもいいのかな?
別に全然難しくない。俺のお願いなんて、それこそ簡単じゃないか」
「王様の所まで、君は案内するだけでいいんだ。
別に、君に殺せだなんて、そう言うつもりはないんだよ」
涙ながらに訴えてくる彼女に、ついつい俺も真面目に返しちゃった。俺もまだまだ、女性の涙には弱いって、そう言うことなのかな。
「案内するだけで、何千人も助かるなら、それでいいじゃんか。
いったい君は、なにを迷っているんだい」
俺の言葉になにも言わず、彼女はうつむくだけで、思わずため息が出たよ。全く、まさかここで仕事放棄なんて、予想外過ぎるんですけどね。
「一応、紳士道にも、女を泣かせるな……って、教えがあるからね。
まあ、今回はここまでで、大目に見ようじゃないか」
俺はポチにそう言うと、後ろへと回り込んだよ。別に変な所を触ろうだとか、そんな気持ちは決してない。取りあえず、その首に手刀を入れて、寝かしつけてやったさ。
「真面目なのはいいけど、真面目に生きることはよくないのにね。
まあ、いずれ彼女も気付く時が、そのうち来るだろうけどさ」
一応、通路の邪魔にならないよう、隅に寝かしつけたあたり、俺の優しさを感じるね。紳士道を歩む者として、我ながら惚れ惚れしちゃったよ。
ちなみに、支えたときに、ボディータッチしてしまったのは、不可抗力でございます。何度も言いますが、決してやましい気持ちはありません。
そして、彼女を寝かしつけると同時に、気合を入れて踵を返したよ。ここからは、自分の力だけで、頑張って探そうと思います。
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