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「ワシを退屈させてくれるなエリス=ヴァレリア、貴公の実力がその程度なら期待外れじゃがな」
弾き飛ばされた戦斧を拾いながらカイザルはため息を吐きました、その瞳は私を見据えたまままるで値踏みでもするかのようだったのです。
確かに攻撃を防ぐだけなら負けはないでしょうがそれと同時に勝ち目もなくなってしまう、今度は私から距離を詰めると大剣を振り下ろしました。
私の大剣が戦斧とぶつかり火花が散った瞬間に力の中心とも言える軸の重心をずらします、私は間髪入れず大剣を上へ凪ぎ払い辺りには砂埃が舞いました。
口の中に砂が入ったせいで不快な感触がして私の瞳から涙が流れる、カイザルの姿が砂埃に消えそれを見付けようと目を凝らした瞬間、その瞬間砂埃の中から拳が現れ私は成す術もなく殴り飛ばされました。
「脆い、脆いな小娘。
貴公がメビウスの将軍足るならあの小童は軍神だわい、この程度なら新しく即位したメビウス王も知れると言うもの」
その言葉に私の頭の中を電気が走り何かがキレた気がしました、気が付けば私は大剣を握りカイザルの後ろに立っていましたよ。
一方のカイザルは肩から脇腹にかけて多きな斬撃の跡、彼はその傷口に触れて大きく口を吊り上げると言いました。
「これは面白いな、戦とはこうでなくてはいかんわい」
大剣から滴る血は無論カイザルの物でしたが振り返った彼の瞳は爛々と輝やいていたのです、私とした事が一時の感情に身を任せるとはまだまだ未熟者の様ですね。
「申し訳ありませんが我が君主に対しての暴言を取り消して頂きましょう、ちなみにこれはお願いではなく命令です」
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