王様殺しは考えようby勇者

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この御姫様、絶対温室育ちだね。世間の厳しさ、それを知らない人だよ。なにも言い返せないようで、今にも泣きそうな顔してるしさ。 まあ、ちょっと虐めすぎたけど、現実なんてそんな物だしさ。床に散らばった書類、それを手に取って、俺はそれを投げ渡したよ。 わかってないのは、ここでは御姫様だけなんだ。そして、俺は親切にもそれを、彼女に教えてあげることにした。 「その書類を読めば、君だってわかるでしょ。 この中で、君だけが子供のように、我がままを言っているってね」 俺の言葉を聞いて、書類に目を通す彼女は、微かに震えていましたよ。そして、読み終えた瞬間、その書類を引き千切るから、さすがの俺も驚いたんだけどさ。 だけど、そこから更に紙を放り投げて、泣きながら王様をビンタするんだ。その一連の動作に、俺の中での御姫様像が、完全に崩壊しましたね。 「父上、私は絶対に認めません。 まだ死んでもいないのに、王位継承を勝手に済ませるだなんて」 「どうして、賊を倒そうとしないのですか。 どうして、死んだ後のことばかり、生きる事を考えないのですか!」 部屋に散らばっている書類、それは全て、自分が死んだ後のそれですよ。まあ、この量を見るからに、御老体にしては、相当頑張ったんでしょうね。 用意周到と言うか、頭が良いと言うのか、でもこれだけの量となると、一日や二日では無理だろうね。何日も前から、自分が死んだ後のことを、たぶん考えてたんだろうね。 「死が避けられないなら、死んだ後のことを考えて、その先を行動する。 まあ、俺を殺そうなんて、そんな夢物語よりも、ずっと現実的な……んな?」 俺が喋っている時って、なんでこんなにも邪魔が入るのさ。今日だけで、もう二回目なんですけど、そんなに神様は俺が嫌いですか。 .
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