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「エリス=ヴァレリア、彼はその昔、勇者と呼ばれておった。
彼の言っていること、それは全て紛れもなく、本当に事実なのじゃよ」
「ただ、その事実も歪められ、曲げられてきた。
長い年月をかけて、世界中の王族達と、彼に関わった者達の手によって」
おっと、ここで口を開いたかと思えば、まさかの援護射撃ですか。わざわざ言わなくても、そんな自己紹介くらい、そもそも自分で出来ますよ。
「すみません。なにを仰っているのか、私にはわからないのです。
国王様、勇者とは……あの、勇者様でよろしいのでしょうか?」
「世界の秩序を取り戻し、人間を魔族の手から救った人物。
あの、おとぎ話に出てくる。勇者様の事を、まさか言っているのですか」
まあ、ここは俺が喋るよりも、王様であるあんたが喋った方が、一応説得力はあるけどね。でも、驚き過ぎでしょうよ。俺が嫌いなら、最初かそう言ってよ。
「ですが、あのお話は数千年前もの、作り話だったと記憶しております。
例え、それが事実にしても、彼が勇者だとは思えません」
「その残忍さと、歪んだ性格は、魔王と言った方が信じられます。
そもそも、黒い翼を生やした勇者など、私は聞いたことがありません」
えーっと、取りあえず失礼だよね。さすがの俺も、そこまで言われたら、ちょっとは傷つくんですよ。まあ、どーせ俺は、最低最悪の鬼畜野郎さ。
「先代の国王から聞かされ、先代の国王は先々代から聞かされた。
そして、その秘密は時を遡り、この国の建国まで続いておる」
「国王のみが知る。国王だけが伝える。そんな、この国の秘密なのだ。
元々、我が国はエルフ族と、それほど仲良くなかったのでな」
「先々代の国王の時代、その時は特に悪かった。
過去からの遺恨を断とうと、お互いに攻めぎ合い、争いは激化しておった」
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