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「和平など、誰も口に出さず。話し合いの席など、考えられぬ程の有様だ。
もはや、片方が全滅するか、滅亡するまで続く、それほどの戦であった」
何百年も前なのに、俺の武勇伝を知っているなんて、やっぱり素直に嬉しいよね。あの時は色々大変で、思い返せば……うん、良い思い出の1ページです。
「そんな折、彼が戦場に現れ、全てを文字通り終わらせた。
そして、そのままエルフ族と、我等の仲を取り持ったのだ」
「戦争は、互いの不可侵条約の締結、それを土台に終息していった。
まさに予想外、それまでの国王は、誰一人存在を信じなかったからの」
「彼の存在を知ってはいたが、内容が内容なだけに信じられぬ。
ワシも含め、歴代の王の意見は一致しておった」
失礼だ。本当に、なんて失礼な奴等だ。本人を前にして、そんなことを堂々と、もうちょっと、オブラートに包めないのかな。
「先々代の国王の時代、互いに主力軍を集結させ、睨み合う状況となってな。
そんな中、戦場に一人現れたのが、そこにおる彼なのだ」
「そして彼は、一昼夜の内に戦争を終わらせた。
数百万の軍勢を相手に、たった一人で戦うなど、冗談にしても質が悪い」
その言葉に、御姫様の見る目が変わるのを、俺は確かに感じ取った。落ち着け、紳士とはいつでも冷静に、大人の余裕を忘れないものだぞ。
「この賊が終わらせたなど、私には到底信じられません。
父上も言った通り、あの戦争はもはや、話し合いではどうにもならなかった筈」
「それほどの規模、条件にも関わらず、この男がやってのけたなど。
数百万が睨み合う死地で、全てを解決するなど不可能です」
そんな大声まで出して、俺に興味があるならあるで、そう言ってくれればいいのにさ。まあ、俺様は確かに、1日で戦争を終わらせたからね。
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