30165人が本棚に入れています
本棚に追加
「如何にも、双方の軍を皆殺しにして、戦争を終わらせたのだ。
もはやそれは、戦争という形を、余りにも一方的な物であった」
「兵の大多数を失い、互いに戦争どころではなくなった。
その時の事を、先々代の王は、己の瞳を疑ったと言うほどだ」
てへ?俺に対する好感度、それが絶望的になって行くのを、俺は肌で感じましたよ。許してくれジョニー、お前の出番はなくなったようだ。
「兵士達の返り血で、己の体を染め上げた彼は、そのまま条約を結ばせた。
互いに国境を越えぬと、攻め入らぬと言う、その条約を強制的にな」
「もし仮に、どちらかがそれを破れば、その破った国を滅ぼすか、王族を皆殺しにする。
その場にて、この言葉だけを残し、彼は忽然と姿を消したそうだ」
「後に残ったのは、おびただしい死体と、惨劇の現場であった。
膨大な戦後処理に、地を埋め尽くすほどの死体、これにはかなり堪えたようだ」
ねえねえ、二人とも目が点だし、そろそろ止めようよ。確かにやりすぎたと思う、だけどしょうがないじゃんか。
「この話を聞いたとき、ワシは信用しておらんかった。
そんなバカげた話、信じる方が難しい。それが例え、先代の言葉であってもな」
「しかし、エルフの里へと向かった軍、それが自滅したと聞いて、ワシは思い出したのだ。
勇者の存在、そしてそれにまつわる逸話をな」
「彼等は命令を無視し、目先の利益を得ようと行動した。
だが、それはこの国の事を想い、あくまで先走ったに過ぎんのだ」
「そんな者達が、戦場で仲間割れなど、絶対にありえんだろう。
腐っても軍事国家、我が軍が敵地で争うなど、到底考えられぬ」
「だから知らせを受けた日、その日から最悪の事態を考え、この書類をまとめ上げた。
この歳でこれだけの量、さすがに骨が折れたわい」
.
最初のコメントを投稿しよう!