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「じゃあ、全員死にたいんだね?」
国王様の命だけで、一人だけの命でよかったけど、ここまで来たらどうしようもない。さすがの俺も、引き下がれないからね。でも、どうせこんな言葉に、意味はないんだろうけどさ。
「この国の騎士となり、剣を捧げた時から、その覚悟は決まっております。
もし、貴方が本当の勇者であったのなら、それこそ愚問でしょう」
言うじゃないか、まだ小娘の分際で、俺に噛みついてくるなんてね。伊達に長生きしてきたわけでも、色々見てきたわけでもないよ。
もうちょっと、人生の先輩に対して、敬意を払うべきじゃないですかね。全てに置いて、お前等は俺よりも若い。絶対的に、その経験値が少ないのさ。
「俺と対等に喋りたいなら、まずはここまで上がって来なよ。
もっと、俺の事を調べてから、その後で出直してくるんだね」
なにやってんだろ。こいつ等と、こんなにも長話するなんて、そんなつもりはなかったのにさ。自分で言うのもなんだけど、俺も丸くなったもんだね。
「正義なんてのは、勝者が言う戯言だ。万人が好きな、調子の良い言葉だよ。
負けたら悪で、勝てば正義。それが一番簡単な理、世の常なんだ」
こいつ等が、この言葉の意味を理解するのは、たぶん死の間際だろう。俺だって、途方もない時間を生きて、やっとわかった真理なんだからさ。
「取りあえず、そろそろさよならの時間だ」
まあ、精々頑張りたまえ。いつかそれに気付いたなら、対等な敵として見てあげようじゃないか。来世になるか、それとももっと先になるのか、そこは保証しないけどね。
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