知謀国家に隠された書物

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どーも、皆さんの永遠のアイドルと言えば……そう、この元勇者である俺ですよね。最近、国王暗殺のおかげなのか、顔写真が大量に出回ってる次第で、安心して眠ることも出来ません。 白黒のインクで、乱暴に印刷されたそれね。なんと、そこには賞金稼ぎが涎を垂らして、悶えるだろう程の金額がさ。かなり有名になっちゃったらしく、小さな街に入ることすら、命がけな日々が続いております。 それで、そろそろ本題を戻しますと、今日はちょっとした用事あるんですよ。大陸随一の知謀国家、リオンと呼ばれる国の王都、そこを目指しているわけでしてね。 ただ……まあ、有名人の定めと言うか、イケメンの宿命と言うべきでしょう。所謂、追っかけと言うものに、絶賛付きまとわれてます。 王都へと向かっていた俺を、そいつは気配を消すことで、背後から襲うつもりだったんでしょうな。まあ、彼女とは長い付き合いだから、別にこれと言って、驚きもしないんだけどさ。 「久しぶりだな、ジョン!」 「あんた、その名前で呼ぶの辞めてよね。 何度も言うけど、私にはスフィルっていう、立派な名前があるのよ」 俺に対するジョンの挨拶は、いつだってこんな感じですよ。なんて言うか、今では恒例すぎて、なんとも思わないから、慣れって言うのは怖いんだよね。 一応、彼女も賞金稼ぎらしいけど、何度も顔を合わせる内に、お互い仲良くなってさ。だけど、俺に言わせれば、まだまだ子供の御遊びだけどね。 あの軍事国家、メビウスが誇る魔術騎士団も真っ青な、その大規模魔方陣での挨拶にも馴れたよ。辺り一帯の草木が、まるごと焼失しちゃうのを見て、ただ頭を抱えるだけなんだから、本当に仲良しだ。 ちょうど歩きやすくなったし、退屈もしてたから、言わばベストタイミングだね。思い返せば、数十年前から俺の追っかけをしているんだ。ファンの中でも、一番長く熱烈なアタックをする彼女に、俺は心から敬服するよ。 エルフ族は寿命が長いから、数十年なんて時間は短いんだろうけどさ。あの時の広範囲滅却魔法や、あの時の滅殺圧縮魔法には……ハハハハ、よく生きてたな俺。 .
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