むかーしむかしのおとぎ話

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俺の視線の先には……その、豪華なドレスを身に纏った女性がですね。距離が少し離れているのと、辺りが暗いから顔がよく見えない。 最初は戸惑っていたけど、俺は直ぐに状況を理解して動きましたよ。ここを作ってからかなり経つけど、侵入者なんて一人もいなかったからさ。 久々だけど、結界が解かれた様子もないし、そうなれば警戒するのも当然だよね。俺は女性の背後に回ると、両手を掴んでそのまま後ろへ回したよ。 別に彼女からいい匂いがするとか、綺麗な青色の髪だとかさ。意外と華奢な体だったり、もしかして美人かも……だとかは、思ってもないんだからね。 「全く、無礼で乱暴な天使様じゃの」 その口振りや、この雰囲気から察するに、どこぞのお姫様ってところかな?ここら辺に国はなかった筈だけど、やっぱり時代は変わるもんなんだね。 「なんで、君はここにいるのかな。どうやってここに入ったのか、俺はそこにとても興味があるよ」 「なにをそんな怖い顔で、妾は幼少の頃よりこの場所を知っておるのだ。どうやって入ったかと聞かれれば、そこは歩いてとしか言いようがないの」 平然とした様子で答える彼女に、俺は思わず呆気に取られたよ。もうちょっと、そこは慌てたりしても良いのに、この態度はさすがに驚きですよね。 「むしろ、主の方がここで何をしておるのか。ここは妾だけの、妾しか知らぬ場所じゃったのに……」 そう言いながら俺の鳩尾にヒットする肘打ちとか、その瞬間に俺との距離を取る彼女とか。いやー、ホント綺麗に入ったらしく、俺の視界が若干ボヤけてますよ。 「ここを妾は気に入っておると言うに、これは些か不粋であるぞ。いくら天使様と言えど、さすがに邪魔しないでたも」 あっ……やべ、これマジで気を失うアレじゃん。まあ、結構疲れてたし、しょうがないと言えば……しょうがないんだけどさ。 「全く、軟弱者じゃの」 ただ、最後に彼女から聞こえきた一言、これは聞き捨てならないよね。体調が良くなったら絶対、その口ををヒイヒイ言わせてやるからな。 .
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