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あの日から、前と同じようにかめとつるんでいるが、どうしていいのか分からなかった。
『おい、仁。』
ぴぃに名前を呼ばれて、はっとした。
『ん??なに??』
『ボーッとしてんなよ。置いていくぞ。』
『あ、待って。』
先を行くぴぃを俺は追いかけた。
『ところで、どこに行くんだよ。』
『着けばわかる。』
そう言われて、ひたすら歩いた。
そして着いたのは、いつものたまり場。
博貴がこっちに気付いて、席に案内してくれた。
そして、5分もかからない内に、亮が来た。
『まだ来ないか。』
『ぴぃ、誰か待ってんの??』
『かめ。』
ぴぃが真顔で俺を見た。
『待った??』
聞き覚えのある声に、一瞬、身体がピクッとなって、俺は正面を見た。
かめは困ったように笑っていた。
『ううん。座って??』
そう言われてかめは席に座った。
『で、ぴぃ。今日は何の話なん??』
『じゃーん。』
ぴぃが出したのは、映画のチケット。
俺はそのチケットの内容に、俺ははっとした。
『あ、これ。』
博貴がそう言って、ぴぃの隣に座った。
『それ、ヒロが見たい言ってたやつやん。』
『そうそう。博貴が見たいって言ってたから、チケット取っちゃいました。』
『山P、最高。これすっごい感動するんだよ。
主人公が切なくて、恋人を残して、病気で死んじゃうんだよ。
すごく可哀想なんだよ。』
『あぁ。』
ぴぃはそう言って、チケットを一人ひとりに渡した。
『はい、かめ。』
かめの目の前に、チケットが差し出された。
『あのさ、ぴぃ。』
俺がぴぃに話しかけようとした時、かめが口を開いた。
『いらない。』
そう言ってかめは、立ち上がった。
『可哀想??笑わせんなよ。』
『かめ、何を怒ってるの??』
『同情してんだろ??生きられない人は可哀想。俺は平気だって。』
『...かめ。』
俺がそう呟くと、かめはチケットを振り払った。
『同情して楽しんでれば。』
そう言って、かめは店を飛び出していった。
『かめ。』
俺は立ち上がった。
『仁??』
『俺も、遠慮しとく。』
『どうして??』
『見る気にならない。ごめん。』
俺はそう言って、店を出た。
かめの姿は、店から出たすぐの所で見つけた。
『かめ!!待って。』
俺はかめの側まで急いで向かった。
『仁、どうしたの??』
『...大丈夫??』
『心配してくれたの??』
『当たり前だろ。』
『そう。でも、大丈夫。』
『そっか。』
『もう、いいだろ。仁はみんなの所に戻りなよ。』
そう言って、かめは歩き出して、俺はそれを黙って見ているしかできなかった。
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