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おれの漠然とした不安の正体は自己保身の塊だった。
今までどうにか小学校で繋ぎ止め、守ってきた自分の立場がリセットされようとしているのだ。
今度こそ自分は立場を失い、孤立してしまうのではないか…。
そんな不安が頭の中にはいっぱいだった。
でも、そんな自分の心配とは裏腹に案外あっさりと友達ができてしまった。
自分を押し殺して、他人に合わせることばかりを考えて生きてきた今までの自分だ。
愛想だけは抜群によかったわけなんだよ。
そんなこんなで、中学時代に出会って一番仲良くなったのが正高ってヤツだった。
正高はちょっと変わったヤツで、小学校時代は嫌われ者だったらしい。
でも、それには理由があって正高は自分の信念や生き方を簡単には曲げない性格だからだ。
自分が間違っていると思えば、自分が例え嫌われようが、周りや先生を敵に回してでも徹底抗戦するようなヤツだった。
おれとは真逆の男だ。
でも、不思議と正高とは馬が合った。
他の友達とは話せないような自分の弱いところや、自分の信念みたいなことを真剣に話合えた。
正高の話す言葉が難しすぎて理解できないことも多かったが、こういう小難しい話に徐々に興味を持ち始める年頃だ、正高と一緒にいる時間は心地がよかった。
でも、順風満帆な中学生活とは到底言えないわな。
正高の強さに憧れはあっても、自分の根っこの部分は何も変わっちゃいない。
小学校よりもさらに人間関係が濃くなり、勉強や部活にも真剣に取り組まなければならない。
そんな生活に耐えるだけのタフさなんて、自分をひたすら押し殺して周りと合わせるだけの生活をしてきたおれにあるはずなんてない。
おれは中学生活を通じて劣等感とプライドを強く意識するようになっていく。
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