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おれは小さい頃から一貫して持ち続けている夢があった。
船乗りになりたいという夢だ。
保育園の頃、家族旅行で乗ったフェリーが大好きになり、船で働く人達が最高にカッコよく見えた。
だから、おれは船乗りになるんだと信じて疑わなかった。
だから、進路も早いうちから決めていた。
全寮制の商船高専へ進むんだと。
高校受験を経験した人ならよくわかると思うけど、高専ってとにかく入試が狭き門なんだ。
おれはそれを重々承知しながらも、実力に見合わない商船高専の受験を強引に推し進めた。
夢への憧れは人一倍。周りが自分の人生の大きな選択肢を前に右往左往しているのを尻目に確固たる信念を持って夢に突き進む自分に酔いしれていた。
そう。
酔いしれていただけ。
夢を叶えるための努力はまったくしなかった。
そして、あっけなくおれの夢は打ち砕かれる。
当然だ。
口だけ野郎のおれだったんだから。
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