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「―――閣下!?ご無事だったのですね!?」
後ろから自分を呼ぶ声がしたような気がして、ブレリトンは立ち止まった。
「閣下!!私ですっ、トーマスです!!」
振り向くと、煙の中から見知った顔が現れる。
副官のトーマス中尉がせき込みながら駆けてきた。
「おお・・・・・・っ、生きていたのか!?」
「はい、爆発に巻き込まれる直前に防空壕へ・・・・・・、間一髪でした」
言葉でなくとも、彼の土埃と煤だらけの姿と、憔悴しきった目を見れば、どんな目にあったか容易に想像できる。
「そうか―――」
ブレリトンは咄嗟に顔を伏せて、それ以上言葉を紡ぐ事は出来なかった。
喉の奥が圧迫されるようにキリキリと痛み出す。
・・・あまりにも不甲斐ない。
彼の顔を直視する事に、改めて自分の失態を認識させられる。
もし、あの時自分の勘を信じて、基地周辺の警戒を厳にしていたならば・・・・・・。
この様な甚大な被害を被ることは無かったのかもしれない。
いや、有り得なかった。
逆に、敵艦隊を発見して、叩きのめしていただろう。
今となっては、それさえも叶わない。
栄光と屈辱。
ほんの少しの采配で揺れ動く気紛れな結末。
運的な要素が強い物語だが、それを引き込めなかったのは自分せいだ・・・・・・。
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