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「確かに・・・」
日の丸を確認した樋端が、神妙な面もちで唸るように声を絞り出す。
これで彼の予想は外れてしまった。
「英語に日の丸・・・、これは、一体、何を示しているのでしょうか?」
「さあね。案外、日米合作の試作機だったりしてね」
草鹿は冗談混じりに樋端を見る。
樋端は苦笑して、
「私たち飛行機屋は、遂に、試作機製作からもお払い箱にされましたか」
大艦巨砲主義が台頭する中では、万年隅に追いやられる自分の立場を皮肉った。
日がだんだんと上って潮が引いてくると、昨夜の雨のせいか濁って確認できなかった機体下部と海底の様子が鮮明になってきた。
完全に潮が引いたため内火艇は引き上げざるを得なくなり、草鹿らはズボンの裾を膝まで捲り上げて歩きながら航空機の要点を調る。
草鹿らを驚かせたのが、機体の上部同様、底面付近にも不時着水時に見られる破損はなく、海底にも尾を引いたような痕跡が見当たらなかったことである。
本当に、そこに突然現れたかの様だった。
「本当にこいつは何者なんだ?」
草鹿はポツリと呟き、その機首に触れた。
ツンと油の香りが鼻を突いた。
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