第1章:邂逅

6/45
前へ
/280ページ
次へ
草鹿が観察した時、この機体には6つの搭乗口らしき箇所があることが確認できた。 そして、その内の機体左側の一番前の搭乗口で、調査と平行してドアを開ける作業も行われていた。 まず、梯子を掛けて素手で開けようとしたのだが、内側から固定されているのかびくともせず。 バールを使って、てこの原理で開けようとしても失敗。 結局、足場を組み機体の切断用に持ってきたガス切断機などの機材を使用する事になり、盛んに火花を飛び散らして解体を行っていた。 それが今、完了しようとしているのだ。 草鹿と樋端は、摩訶不思議な現象で萎えかけた探究心を奮い立たせ、現場に向かった。 二人が梯子の下に足を運んだときには、もう、作業は終わっていた。 ドアの周辺は無惨に焼けただれ、金属は溶けて酸化したのか黒く変色している。 切断していた技術者が満足げな顔をして、機材を持って降りてくると、今度はバールを担いだ別の作業員が梯子を上っていった。 草鹿と樋端からすると、貴重な資料となるかもしれない機体を無碍に扱って欲しくは無かったが、それでも、初めて目にする形の不明機の中を早く調査したかった。 いや、見たかったと言うのが本音か。 恐らく、現場の技術者も同じことを思っていたのだろう。 だからこそ、本来は航空廠の格納庫に輸送してから調べるはずだったのを止めて、強攻策をとったのだ。 勿論、生存者がいればその一刻も早い救出、も目的の一つである。
/280ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1166人が本棚に入れています
本棚に追加