第1章:邂逅

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・・・ ・・・・・・ 「・・・・・・頭いてぇ」 それが、高野が目覚めた時の第一声だった。 高野は朧気な目で、むくりと上半身だけ起き上がる。 背中が接している床が堅く、冷たい。 どうやら、自分は座席ではなく、通路に倒れていた、と認識するまでそう、時間は掛からなかった。 「何がどうなったんだ、畜生」 体をあちこちにぶつけたのか、全身が、特に右手が痛い。 高野は試しに手を握って、開いてみる。 暖かな皮膚の感触があったし、伸びすぎた爪が手のひらに食い込んで、多少痛かった。 ・・・ああ、これなら、大丈夫そうだな。 他にも痛む所はあるが、あまり酷い怪我では無さそうだった。 「・・・みんなは?」 高野は肘掛けに手を突いて立ち上がる。 辺りを見回す。 そして、愕然とした。 頭を鈍器で殴られたかのような錯覚を覚えた。 当然、彼の目には血まみれで助けを求める負傷者、あるいは遺体が映るはずであったが、 消えていた。 床には手荷物や、収納エリアから落ちた荷物が、竜巻でも起きたのか、と思わせるくらいに散乱している。 まだ飲み物が回収され終えて無かったのだろう。 床や座席に珈琲が染み着き、香ばしい香りを放っている。 温かみの残る毛布が座席に引っかかっている。 だが、誰もいない。 人が、そこにはない。 文字通り、乗客全員が消失していた。
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