第3章:開戦

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「・・・そう言えば、この戦争もそうじゃったな」 山本がぽつりと呟いた。 「ええ、高野曰わく、この戦争は米国が中国の利権を得るために画策した戦争だそうです。日本と米国は古くから利権を巡って争っていましたからね」 その起源は日露戦争時まで遡る。 日露戦争に勝利した日本は、鉄道を始めとする多くの権利を手に入れた。 そして、その利権のさらなる発展の為に、満州鉄道株式会社を設立する。 名目上は株式会社であるが、実際は半官半民の会社であった。 なぜ、ここで満州鉄道株式会社の名前が出てくるのか? 実は、満鉄が創業を始めた途端、日本政府にとある申し込みがあったのだ。 米国から、満鉄を共同で運営しないか、というものだった。 米国はこの時から虎視眈々と中国市場進出を露骨に狙っていたのだ。 そして、日本がその申し出を断ると、米国は日本人の移民禁止法案を制定した。 この時から、日本と米国の確執は生まれていたのだ。 「全体主義の撲滅はあくまでも建て前と言うことじゃな。戦後、日本を米国の良いように懐柔するための布石なわけだ。全体主義は悪、民主主義こそ正義、国民にこの思想さえ植え付けて日本を統治するためのな」 「全体主義は、日本人である私から見ても駄目ですがね。軍が力を伸ばし過ぎると、ロクな事がありませんから、早急に民主化を図るべきです。勿論、我々日本人の手で。戦後は、日本は米国によって保護国化されたそうですし、決議したのは日本とは言え、憲法さえも米国が考えた物。もし、この戦争に敗北すれば、この世界でも同じ様な事が起こるでしょう」
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